MOEN MH4318の修理

洗面台の蛇口が壊れた。水を止めようとハンドルを操作したら“バキッ”という音がして、ハンドルがバカになってしまった。見てみると、ハンドルと蛇口本体との間にある黒いプラスティックの部品が欠けている。多分、経年変化だろう。仕方ないので部品を買いに出かけてみた。

壊れたのは“MOEN”という会社のMH4318というモデルの蛇口。

このMOENという会社は米国のオハイオ州に本社を置く水回り製品では世界規模の企業である。(日本で言えばTOTOINAXのような企業だ。)ところが、1997年に日本から撤退している。そのために東急ハンズとかでも扱っていない。東急ハンズの人が“再上陸して連絡先はある”と言って電話番号を教えてくれたのだが、調べてみるとそこはMOENではなく“マウイ・インターナショナル”という代理店に過ぎない。
この際なので部品が入手し難いMOENではなく、いっそTOTOINAXの蛇口に変えようかとも思ったが、それも随分と手間暇がかかる(お金もかかる)ことになるので、先ずは部品の入手先を探してみた。

東急ハンズで紹介してくれたマウイ・インターナショナルでも良かったのだが、ネットで調べてみると“moen.jp”というドメインを使った有限会社 森野商会というところがあった。最初は“moen.jp”というドメインを使っているので怪しさはあったのだが、調べているとこの会社から部品を取り寄せている人も何人かいるようだし、対応も良いという書込みあった。そこで今回は森野商会に連絡をとった。
既にモデル名も分かっているし、故障個所も分かっているので(多分、同様の問い合わせは多いのだろう)すぐに部品を送ってもらうようにした。翌日の午前中には代引きで部品が届いた。8,000円である。なお、壊れたのは黒いプラスティックのパーツだけだったので、これだけを送ってもらうようにお願いしたが、“カートリッジも固くなっていませんか”と聞かれた。カートリッジとは蛇口の出水を制御しているメインの部品の様だ。“いえ、特にそうは感じてないので、黒いプラスティックの部品だけで結構です”と言ったのが、結局バラ売りはできないから8,000円ということだった。最初は何か要らない部品まで売りつけられた、という気分だった。しかし、カートリッジを交換して気がついたのだが、経年変化で気がつかないうちにカートリッジの動きが物凄く“シブク”なっていた。交換したら嘘のようにハンドル操作が軽くなった。

代引きで届いたのは“封筒”に入った商品だった。勝手に“箱”で送られてくるものだと思っていたので、何か拍子抜け。

封筒の中には日本語で書かれた簡単な説明書と、修理キット一式が入っていた。
更に修理キットには

  1. 英文マニュアル
  2. “カートリッジ”と“カートリッジ・リムーバー(白いプラスティック部品)”
  3. 黒いプラスティック部品(retainer pivot nutと言うらしい)←この部品が今回壊れた
  4. 灰色のハンドル・コネクタ

が入っている。カートリッジとカートリッジ・リムーバー(取外し用ジグ)はビニール袋に入っている。カートリッジはグリスで保護されているので手に油が着くので注意。

■前準備

修理に必要な工具は次のとおり。

  1. 大きめの“+”ドライバー(今回は#2を使用)
  2. 小型の“−”ドライバー(今回は1.8mmを使用)
  3. ウォーターポンププライヤ

ウォーターポンププライヤでなくても普通のプライヤ、もしくは大型のペンチでも作業は可能かも知れないが、私はウォーターポンププライヤを持っていたので、それを使った。マイナス・ドライバーはクリップピンを抜くために使うので、必ずしもマイナスドライバーで無くても良い。(たとえばキリとか先の尖ったものでも大丈夫だろう。)
前準備として必ず水道の元栓を閉めておく。もちろん温水、冷水の両方。これを忘れると作業途中で水が噴き出すことになる。

■作業内容

さて、先ずは蛇口を分解して、古い部品を取り出す。最初は蛇口のテッペンにあるMOENのロゴの入ったキャップを外す。これは爪でハンドルにくっついているたけなので、ゆっくり引っ張れば外れるが、爪が折れないとも限らないので余り無理に力をかけないこと。

次にハンドル・コネクタ(白いプラスティックの部品、送られてきた修理キットでは灰色)を固定しているネジを外す。ネジを外すと、ハンドル・コネクタとそれにつながるハンドル全体が取り外せる。

ハンドルが外れたら、次に蛇口本体側のリングを外す。これは工具を使わなくても手で左回りにひねれば外れる筈だ。(シブくなって手で外れない場合は、雑巾などを巻いて傷つかないように工具を使う必要があるが、私の場合は問題なく手で外れた。)外側のリングが外れると、一緒に内側のリング(今回破損したプラスティックの部品)も外れる。

白いプラスティックのリングを外す。

2枚のワッシャ(プラスティックと金属)を取り除く。

これでカートリッジの本体が見えるようになるので、次に“固定クリップ”を外す。小型のマイナスドライバの先端でクリップを引っかけて引き出せば簡単に外れる。


いよいよカートリッジの取外し、だが。これは日本語の説明書も英文の説明書もいまひとつ分かりづらい。先ずは、白いプラスティックのカートリッジ・リムーバーの凹凸とカートリッジの凹凸がかみ合うように置く。


次にウォーターポンププライヤでリムーバーの頭を挟んでこれを回す(そうすると、カートリッジ自身も回る)。ここで説明書を読んでも分からなかったのは、どちらの方向へどれくらい回せば良いか、である。英文の説明書では右回りに90度と書いてある。日本語の説明書では“充分動かしたら”と書いてある。後述するMOENの説明ページを見てわかったのだが、要は長年使っていて固くなっているので“適当に”左右にグリグリと回して緩めておく、というのが正解の様だ。カートリッジ自身は回転させて爪で固定するといった構造では無いので、原理的には回さなくても、引っ張るだけで抜ける。つまり、いきなり引っ張っても外れにくいので、予め“遊び”を与えておくための作業だろう。

“遊びを作っておてい”とは言っても、カートリッジを取外しには相当力がいる。カートリッジの頭の部分(金属)をプライヤで思いっきり挟み、何回か力ずくで押したり引いたり(引くときに力をいれる)してやっと外れた。

古いカートリッジ(左)と新しいカートリッジ(右)。見た目は変わらないが古いカートリッジは動きが固く(シブク)なっている。

カートリッジを外した状態の蛇口の本体。

後は以上の作業の逆順で組み立ててれば良い。先ずは新しいカートリッジを装着する。説明書にあるように“半透明のツバを前後側に、シャフト上部に“段”がある面を手前側にして”装着する。

ちなみに、“段”がある面を向こう側にして装着すると、温水と冷水のハンドルの向きを変えることができるらしい。(つまりハンドルを“左に回すとお湯になる”を“右に回すとお湯になる”に変更できる。英文のホームページに書いてあったが、私は実際にはやっていない。)


次に固定クリップを差し込む、が、これが一発で差し込めない。

仕方ないのでカートリッジ・リムーバーを利用してプライヤでカートリッジの位置を微妙に左右にずらしながらクリップを差し込む。

ここで水道の元栓を開けて、吐水することを確認する。(カートリッジ中心の金属部分が、上に引き上がった状態でないと水はでない。)次に、カートリッジ中心の金属部分をカートリッジリムーバで押さえて引っ込め、水が止まることを確認する。この時カートリッジと蛇口本体の間から水が漏れていないことも確認する。そのため、元栓は目いっぱい開けて圧力をかけた状態にする。

以上の確認が済んだら、水道の元栓を再度閉め、カートリッジの金属部分が引っ張り出されている状態にする。後は、

  1. ワッシャを挿入
  2. 白いプラスティックのリングを装着
  3. 黒いプラスティックのリングと金属リングをはめ込む
  4. ハンドルを装着(後ろ側の凸部を合わせるようにして)
  5. ハンドル・コネクタをネジで固定
  6. MOENのカバーを装着
  7. 水道の元栓を開ける

で終わり。

今回は、ハンドル・コネクタは壊れていないので、昔のものを引き続き使うことにした。

 感想

ハンドル回りの部品やカートリッジの交換の範囲であれば、作業は難しくないので部品さえ手に入れば何とかなる。初めての私でも15分位で作業は終わった。もし、もう一回やれと言われれば5分以内で終了するだろう。

修理が終わって初めて気がついたのだが、10年以上の間にカートリッジの動きがだいぶシブクなっていた。交換したら嘘のように軽く動く。指先の感覚が新しいカートリッジの動きに慣れるまで2〜3日かかる程だった。カートリッジの動きがシブクなっていたために、Pivot Retainer(黒いプラスティックの部品)に負荷がかかって破損したようだ。

森野商会の対応については、休日に電話しても対応してくれ、しかも翌日の午前中に部品が届くというのは大変嬉しい対応だった。事務的なやり取りだけだったので、技術的な電話サポートをどこまでやってもらえるかは今回からは分からなかった。

今回は何とか部品が手に入ったから良かったが、もし今後、水回り全体を交換するのであればMOENは使わないだろう。事業撤退するとしてもアフターサービス部門も残さないような企業は信頼できない。